鉄は生体に必要な元素である。例えば鉄が不足すると鉄欠乏性貧血になる。しかし鉄にはもっとすごい力もあるのだ。鉄には触媒作用というのがあって、例えば鉄瓶(鉄で出来たやかん)でお湯を沸かすとお湯から有害な物質が消えておいしいお茶が飲める。またぬか床に鉄を入れておくと、なすがきれいな紫色に発色し非常においしそうに漬かる。
今回はその鉄の利用の中でもフライパンに着目し鉄製のもので調理すると大変おいしくなるケースを紹介しよう。
鉄はアルミや銅といった素材と比べると熱伝導性が悪い。これは電気抵抗を計ってみれば一目瞭然である。だったら金は一番伝導性が良いんじゃ!という人もいるだろうが、金持ってなきゃそんな調理器具、誰が買えるって・・・
冗談はさておき、熱伝導性が悪いと云うことは熱の伝わり方にむらが出来ると云うことである。したがって焦げやすいことが長所であり短所でもある。フライパンの素材と調理法との関係は次のように考えると良い。
・鉄 --- ハンバーグやステーキなど、焦げ目が付いた方がおいしい料理に向く
・アルミ,銅 --- ホワイトソースなどのように焦げるとだめな料理に向く
私の家では学生時代から既に20年近く鉄瓶を使っている。理由は放射線写真学の先生が鉄瓶で湯を沸かすとお茶がおいしいし、また身体にも大変良い。特に貧血気味の人にはお勧め!と言うのを授業で聞いて(何の授業かって。それは写真の現像液などを調製するとき蒸留水を使うのだが、無いときは鉄瓶で20分ほど沸騰させたお湯を使えば良いのだそうな)次の日早速金物屋に買いに行ったのである。3件目くらいでやっと見つけて「あそこにある鉄で出来た土瓶下さい」と云ったら「んっ・・ああ鉄瓶ね」「おいくらですか」たぶんかなり高いとは思っていたが12000円にて購入した。それを今でも使っているのである。当時は貧乏学生だったので出費は痛かったが、なんだか心は非常に満足したのを今でも思い出す。
私の家では当然のように調理器具は鉄製である。基本的にフライパンである。鍋などは管理が難しいので使っていない。しかし数えてみるとフライパンだけで3個、中華鍋が1個あるから結構持っているなぁーと思う。それ以外に銅製の卵焼き、そして最近テフロンのフライパンを購入した。出来事はここから始まった。
子供が中学生になって朝弁当を作るようになると、かみさんが云いだした「鉄のフライパンは重いし使いにくいからテフロンのフライパンがほしい」私もなるほどと思って早速購入する。使ってみると軽いし焦げ付かないし大変使いやすいではないか。私もここで鉄信仰が崩れるかに思えたが、ある時子供が云いだした「目玉焼きを焼くときは鉄のフライパンで焼いてほしい」私は思わず「んっ!」、またある時かみさんが云った「ネギ卵(家で作るネギ入りの炒り卵)を作るときは鉄のフライパンで作ってほしい」またまた「んんっ!」確かにテフロンのフライパンで作るときよりおいしいのだ。味の違いは何なのか?いろいろ考えてみると焦げ目が付くか付かないかが決定的に違う。そしてその焦げ目は大変食欲をそそる良い香りなのである。その後鉄製が良いケースとしてチャーハンの味が決定的に違うと云うことにも気が付いた。
やはり鉄はすごかった。私の選んだ道は間違っていなかったのだと、また鉄のおかげで満足な日々を過ごしている。ここまで読み進んでこられた方には是非鉄の調理器具を試していただきたい。鉄瓶しかりフライパンしかり。また我家には大小機能の異なる包丁が8本あるが、私の使っているものはパン切りを除き全て鉄製である。したがって、さびもするが、ちゃんと水分をふき取ってからしまえば、そのようなこともない。
例えばこんな事もある。誤って空焼きしてしまった場合テフロンならまずダメになってしまうが、鉄ならばやや冷めたところで油を引いておくだけで何も問題はない。包丁も芯は鋼なので研げば切れ味は完全に戻る。焦げてしまって激しく擦ると傷が付くが、これも鉄製ならば、それほど問題なく使い続けることが出来る。
鉄万歳!