核医学でもっともよく使用される,99mTc は原子番号 43 質量数 99 の物質で,原子番号 42 の 99Mo より β-崩壊(原子核内で過剰の中性子が電子を放出して,陽子に変わる)により生成される. 左肩にある m は核異性体の意味で励起状態にあることを示している. 励起状態は電磁波(γ線)を放出する事で基底状態になるが,99mTc の場合この準安定状態が長く続き,半減期 6 時間で基底状態になる. 放出されるγ線のエネルギーは 142keV および 140keV である.
自然界に存在する原子は原子核と軌道電子からなり,原子核はさらに陽子と中性子という核子からなっている. 核内の陽子の数を原子番号 Z,中性子の数を N,両者の和を質量数 A という. 原子番号 Z,質量数 A,それに核の量子状態(エネルギーレベル)が違う原子のことを核種という. 核種には特別な呼び方がある.
同位元素−−−Zが同じでAが異なる核種
同重元素−−−Aが等しい核種
同中性子元素−Nが等しい核種
核異性体−−−核内のエネルギー状態のみが異なる核種
放射性核種を扱う場合のエネルギーの単位にはeVを用いる. 1eVは電荷eの電子または陽子が1Vの電位差で得る運動エネルギーで,
1eV = 1.6×10-12 erg = 1.6×10-19 J
同位元素のうち不安定で,放射線を放出して別の核種に変わる可能性のある核種を放射性同位元素(RI)あるいは,放射性核種という. このような性質の事を放射能といい,自然界にも放射能をもつ核種が存在する.
放射性核種(親核種)が放射線を出して別の核種(娘核種)に変わる事を放射性崩壊(壊変)と言う. ある核種の集団は,ある一定の割合で崩壊するので,親核種の数は時間に対し,指数関数的に減少する. すなわち時間軸でみると,親核種の数が半分になる時間は常に一定になるため,この時間のことを特別に半減期と呼んでいる.
放射能の強さは単位時間当たりに起こる崩壊数に比例する. 単位時間当たりの崩壊数の多い核種や,同じ核種でも核種の数が多ければ放射能は強くなる. 1秒間に1崩壊が起こる場合の放射能を1ベクレル(Bq)という.
α崩壊
α線を放出する.線スペクトル.核医学には利用されない.
アイソトープ手帳では210Pb以上の質量数をもつ核種のみ.
β崩壊
β線を放出する.連続スペクトル(ニュートリノとエネルギーを分かちあう)
β-線は原子核内の余分の中性子が陽子に変わるときに放出される電子である.核医学ではin vitro(人体にRIを投与しない)内容療法で利用される.131Iを用いたin vivo(人体にRIを投与)検査では体外計測のためγ線が利用され,β線が利用されることはない.
※原子炉で生成される核種に多い.
β+線は原子核内の余分の陽子が中性子に変わるとき放出される陽電子である.PETでは,消滅放射線(511keV)として利用される.
※サイクロトロン生成核種に多い.
電子捕獲(EC)
原子核内の余分の陽子がβ+崩壊する変わりに,核にちかい軌道電子(通常 K 殻)を捕獲して中性子に変化する現象である.この空席の K 殻にさらに外側の殻から軌道電子が補充され,特性X線(K−X線)を放出する.心筋シンチグラフィや腫瘍シンチグラフィで用いられる201TlがHgよりの K−X線を利用している.
※サイクロトロン生成核種に多い.
核異性体転移(IT)
核異性体が,励起状態から基底状態に遷移する過程で,γ線を放出する. in vivo で最もよく使用される.99mTc や 81mKr などが主なものである.
内部転換(IC)
励起状態にある原子核がγ線を放出代わりに,その余分のエネルギーを軌道電子に与え,原子外に放出する現象である.このとき放出される電子のことを,内部転換電子といい,線スペクトルとなる.内部転換により空席となった殻には外側の殻から軌道電子が補充され,そのエネルギー準位の差に相当する特性エックス線が放出される.このときにエックス線を放出する代わりに軌道電子の一つがこの励起エネルギーを付与され原子外に放出されることがある.このとき放出される電子をオージェ電子という.
※X線やβ線は通常連続スペクトルとなるが,特性X線や内部転換電子・オージェ電子は線スペクトルである.これは相互作用におけるエネルギーの授受が一対一の関係になっているからであり,出題されやすいところである.
親核種と娘核種がともに放射性であり,親の半減期が娘の半減期にくらべて十分に長いとき,ある時間経過した後はお互いの核種数(放射能)の比が一定になり一種の平衡状態が成立する.この場合娘核種をいったん取り去っても,また一定時間経過後にはまた平衡状態となるので,この性質を利用して娘核種を利用するジェネレータが開発され利用されている.親から娘核種を抽出してもまた娘核種が生成されるので,あたかも乳絞りのようであることからミルキングと呼ばれている.このようなジェネレータのことをカウといい,テクネカウなどが有名である.
放射性の核種のことを放射性同位元素(Radioisotope)RIという。
4.1)原子炉
n→γ反応や,核分裂によって放射性核種を得る.原子力発電にともなう副生成 物なのでコストは比較的安い.臨床で利用されているおもなものは,60Co・ 99mTc・131Xe・131I などがある.中性子過剰となるためβ-壊変するものが多い.また核分裂生産核種のほとんどはβ-壊変する.
荷電粒子を核子にぶつけて原子炉では生成されない核種を生成する.コストは高 いが,現在利用されている多くの核種がサイクロトロンにより生成されている.生成核種はβ+崩壊するものやECが多い.PETで使用するβ+核種(ポジトロン)半減期が短いため,施設内に小型のベビーサイクロトロンを設置して核種を生成後すぐに利用出来るホットラボがある.陽子過剰となるため,質量数の小さいものではβ+壊変し,大きいものではECを起こす.
11C,13N,15O,18F,52Fe,67Ga,111In,123I
←β+ EC→
核医学検査で最もよく使用される99mTcはRIジェネレーターでミルキングに より得られる.RIカウとも呼ばれ,よくテクネカウ等と呼ばれている.次によ く利用されるジェネレーターには81Rb→81mKrがある.